高齢者と擬似夫婦関係
付き添い婦さんとの"擬似夫婦関係"の中で、「甘える-甘えさせる」という人間関係だけが、2年間継続していたのです。
だが、食事を介助してもらうことは、この「甘える-甘えさせる」という日本的な人間関係にのみよるのではない。
彼らが、食べようと思えば1人で食べられるのに、あえて介助してもらっているのには、もっと深い根拠があるように思える。
彼らは、食事介助してもらうことをとおして、"関係"を確認しているのです。
西洋的な近代的個人は、自立することによって自己を確認するものらしい。
だが、我々日本人、特に私たちが関わっている日本の老人たちは、依存し、あるいは依存されることによって自己を確認するのです。
食事介助をしてもらえば、1日3回、確実に"関係"を確認できるのです。
しかも、食べるという、生きていくことに直接つながることがらであるだけに、他のことよりも食事介助してもらうことに、彼らはこだわるのです。
食事介助が、彼らにとって唯一の"関係"の確認の手段、つまり、"関係的自己"の確認の手段であるとしたら、いくら左手が使えるからといって、彼らが自立してくれるはずはない。